"君が僕の名前を呼ぶただそれだけで僕は君に恋してる"

「マスター!」
…いつからだろう。そう呼ばれる度に胸の奥がモヤモヤとするのは…。
何故かは分からない、けれどそれは凄くイヤで。モヤモヤは段々イライラに変わっていった。
〝ねぇ颯斗、オレはマスターなんかじゃないんだよ。〟
そう言うと君は決まってこういうんだよね。
「何を仰るんスか!マスターはマスターじゃないスか!」
…限界だった…
「…だから!…オレはマスターでも君の主でもない!速水太陽だよ!!」
…君がオレをマスターとしてしか見ていないのは分かってる。…じゃあホントのオレは?速水太陽としては見てくれないの…?
ぐるぐるとする、モヤモヤが大きくなって泣きたくなった…同時に後悔も襲ってきた。…どうしてこんなこと言ってしまったんだろう。
〝これじゃあ…まるで…〟
「…すいません、マスター…」
ふわっと優しい香りがする…その時気づいた。
〝颯斗に抱き締められているんだ〟
「…どうして、優しくするんだよ…」
‘’…すいません、マスターが辛そうなお顔をなさっていたので‘’
…ずるい。そんな表情で言われたら欲張りになってしまう。
「オレは、太陽だよ…」
そう消え入りそうな声音で告げると君は優しくどこか幸せそうに微笑んでいった。
「はい、太陽さん。」
モヤモヤが消えてなくなっていくようだった。君がただ名前を呼んでくれただけで…オレを、速水太陽自身を見てくれたんだと思って…
嬉しくてどこか照れくさくて…
ーオレは何回も君に恋をするー