あの日…7年ぶりに会ったお前に恋をした。


何の取り柄もなく。親友を失ってしまった俺には何も残されてなどいなかった。


         ー救ってくれよ。俺の事ー


            【小学生】

僕は朝、眠たい目を擦りながらリビングへと向かう
「おはよう、るいくん今日は早いのね」
と微笑みながら母さんは笑った
「うん」と僕はあっけない返事をし
テーブルの上にあるトーストを口いっぱいに頬張った
するとまだ6:00だと言うのに
家のインターホンが鳴った。
誰かと思ったら、

ーあぁ。またあいつかよー
そう。「橘あいら」だ。
あいらはつい最近知り合ったばかりなのだが
僕は、あいらの事を一目見た瞬間好きになった。
そして多分あいらも僕の事が好きだ。
これは決してツンデレとか、勘違いとか、ナルシストなどと言われるやつではない。

あいらは驚くほど分かりやすく嘘がつけない性格だ。
そのあいらの思わせぶりな態度に僕の事が好きなんだなと確信した。

あいらは低身長で小柄…おまけに声も可愛く、顔も整っている。
母親はイギリスとアメリカのハーフで父親が日本。
そのせいか顔がとても可愛い。

もちろん僕はそんな理由で好きになったわけじゃない。

インターホンをのぞくと…モジモジしながら立っているあいらの姿があった

「こんな早い時間にどうした?」とインターホン越しに聞いてみたら、
小さく控えめな声で、「宿題…昨日、連絡帳に書くの忘れちゃって…。」と彼女は言った。
そう。彼女は天然な上、勉強ができないのだ…。
「分かった。とりあえず中に入って…」と僕は優しく言った。
「お、おじゃましま~す」
ふわっとした甘ったるい匂いが僕の部屋に充満する。

僕とあいらは順調に宿題を進めていく。

終わった頃には…。
「ってやべ。7時30じゃん!!」
ーせっかく早く起きたのにー
と僕は残念に思った。

「ごめんね」と彼女は申し訳なさそうな顔で謝ってきた。

すると目の前に、僕の幼稚園の頃からの幼馴染
山田 かいとが焦った顔で信号が青に変わるのを待っていた。

かいとは僕たちの存在に気づいたのか、
大きく手を振りながら、「おーい」と言ってきた。

急ぎ足でかいとの方に近寄り、「お前も遅刻?」と尋ねた

すると、「そうなんだよ。勉強、分かんなくってさ。手こずってたら時間過ぎちまって」
「お前もか」
「?」と不思議そうな顔でかいとが立っていると
僕の後ろに隠れていたあいらが
えへへとした表情で出てきた

             【嫌われ者】
8:00…ヘトヘトになりながら教室に着いた僕たちは
自分の席へと戻った。
先生はまだ来てはいなく。
「ラッキーな日だな」とにっこりかいとが言ってきた。

みんなが朝読書をしている間、僕はあまり本が好きではないので
あいらの方を直視していた。

僕の席は真ん中の一番後ろ側なのだが、
あいらの席は窓側の一番前の席だ。
後ろから見ても綺麗な黒髪と横顔がとても美しく人形のようだった。

休み時間
僕は、かいとと雑談をしていた。
かいとの席は、僕の席の前なので楽に話す事ができた。

あいらの方を見ると、相変わらず小説を読んでいた。
あいらは顔が整っているせいか、女子からは妬まれ…嫌われていた。
なのであいらに話しかける者は誰1人といなかった。

もちろん僕も話しかける勇気などなかった。

あいらが嫌われ始めていたのは、以外につい最近の出来事だ。

クラスの中心とも言われている女子が、
「あいらちゃんって顔綺麗だよね。ねぇ、わたしにもその顔ちょーだい!」
と言って、
当然、あいらは
「えぇ、顔はあげられないよ。」と困ったような表情で言った
するとその女子が、ムカついたのか、その日からあいらを無視するようになった
周りもあいらを無視し始めた。
これが理由だ。
本当、僕もくだらない理由だと思ったよ。

でも、僕はそこまで仲良くないし、あいらに話しかけられるまでは何も関わっていない。
でも、そんなある日…
あいらの嫌われる頻度がひどくなっていった。

ついにはいじめと言っても過言ではないくらい。
そんな僕も、クラスの中心の女子に
「あいらちゃんと話したらどうなるか…分かってるよね?」と脅された
なので僕は、従ってしまった。

あいらに話しかけられても無視。
それでもあいらは文句ひとつ言わなかった。

            【高校1年生】
そして時が経ち…俺は高校1年生になった。
俺はあいらとあの日以来喋らなかった。

今となってはなんで喋らなかったのも忘れるぐらい、
あいらの存在は俺の中で小さくなった。
小学3年の時以来一度も同じクラスになっていなかったからだ。

でも、あいらとは真逆で毎年クラス替えがあるたんびに同じクラスになるかいととは、
腐れ縁と言っても過言ではないくらい仲が良くなった。

ーまぁ、元から仲いいんだけどなー

かいとはいつもニコニコしていて、口癖は「大丈夫」だった

いつものようにかいとと登下校をしていると
首にアザのようなものがある事が分かった

「これ、どうしたんだよ」と俺は尋ねた
       すると
「あ、あぁ!!これ?!なんか痒くてさ、ずっと掻いてたらアザになっちゃった☆テヘペロ☆」とヘラヘラ笑いながら言ってきた。

俺は「そう?」とあまり深読みはしなかったが、
時が経つにつれて、アザが多くなってくる事に俺は気がついた。

勇気を振り絞って、
「おい、アザだんだん増えてるじゃねぇか。本当にどうしたんだよ。悩み事があったら言えよ。俺ら親友だろ?」と下校中に言った。

また、かいとはにっこり笑い
「大丈夫だよ~!俺、以外にどんくさくてさ、よくぶつけるんだよな!」と無理したように言った。
「お、おい。全然大丈夫じゃねぇじゃん」と言おうとした瞬間。
「あっ!俺、用事があるんだった!ごめん!先帰るわ!!」と走って行ってしまった。


あの後、俺は後悔した…。無理矢理にでも、止めればよかったと。
   


           【親友】
あの日から…かいとは学校に来なくなった。
心配になった俺は、かいとの家に向かった。

かいとの家のインターホンを鳴らすと、
悲しい表情でかいとのおばあちゃんが出てきた。
かいとの父と母はお互い共働きで、いつも家にいないため、
かいとはおばあちゃんの家で暮らしていた。

いつも微笑んでいる、おばあちゃんが悲しい顔で
「あら、るいくん。」と言った。
「かいとくんはいますか?」と尋ねたら、
おばあちゃんは目に涙を溜めながら、
「中へ入ってください」と言ってきた。
俺は嫌な予感がしつつも中へ入った。

すると。

かいとのお仏壇が置かれてあった。
状況が上手く理解できていないのに、
おばあちゃんはたんたんとかいとの事について話し始めた。

状況が理解できて、もう一回おばあちゃんに事情を聞くと、
どうやら、かいとは俺の知らないところでいじめにあっていたらしい。
その原因は、かいとが好きな女子、白石 りつを守ったがゆえにいじめられたらしい。
そのいじめは過酷なまでに辛く、苦しかった。

なんで、親友の俺に相談しなかったのか。
そりゃ、確かに、相談したところで何も変わらなかったかもしれない。
でも、せめて話だけでも聞きたかった。
かいとは俺の事親友だと思っていなかったのか。
俺の心は悲しみと後悔で溢れた。


          【感情】
かいとがこの世を去ってから、役1ヶ月が経った。
かいとが亡くなった事を知って、その一週間後、担任の先生から
おばあちゃんが俺に話してくれたものと一緒な内容でみんなに伝えた
みんなはショックを受けたような表情でただ、呆然と先生の話を聞いていた

俺は何も思わなかった。思えなかった。
もう、泣く事も笑う事もできなかった。

ーあれ、感情ってなんだっけー

そう思うようになった。

           【7年ぶり】
いつも通り、学校に通って勉強をして…家に帰ってご飯を食べる。
そんな当たり前の日々が続いた。
これといって楽しいわけでもなく、つまらないわけでもない。

悲しい事も、面白い事もない。

よくよく考えてみれば俺はかいと意外に友達がいなかった。

ーかいとがいないとものすごくつまらないものだなー

そう思いながら、日直の仕事を終わらせようとする

先生から頼まれた書類を職員室に運ぼうとすると
前から他のクラスの女子がこちらにぶつかってきた。

ーぶつかってきたというよりかは、ぶつかってしまったがこの場合正解かー

「ご、ごめんなさい!」そう言って慌てて書類を拾う彼女は、
見覚えがあった。

「あいら?」
つい俺は懐かしい好きな人の名前を口走ってしまった。
そんなわけないと思い。
「ご、ごめん。なんでもない。忘れて」と言いかけた瞬間
「るい、、くん?」とパッチリとした目で俺を見てきた。
相変わらず白く繊細な肌、長い下まつげと上まつげ、パッチリとした目に、
長く綺麗な黒髪。

昔のあいらのままだった。

「久しぶりだね」と彼女は、かがやく笑顔で言ってきた。

ーあぁ、これだ。俺はこの笑顔が昔大好きだったんだー
と、今も昔も変わらないままの笑顔に、雰囲気。

また、あいらの事が好きになりそうだった。


       【両片思い】
あの日俺とあいらは、一緒に帰った。

今になって分かった事だが、昔より笑う頻度が多くなっていた。

いつも笑顔でいるあいらを見て
かいとが頭の中によぎった。

かいとのことを考えていると、ふとあいらが
「あれ?かいとくんと、一緒じゃないの?」
と涙が出てきそうなセリフを俺に投げかけた

「あぁ。かいとは…。かいとは。。もう。この世に居ない、、んだ」
と涙をこらえながら俺は言った。
久しぶりに泣くという感情を出したな。と俺は心の中で思った。
それを聞いたあいらは、
「嘘」と言って今にも涙が出てきそうな目でこちらを見つめた
本当は俺だって嘘だって思いたかった。
「本当だ。」と俺は彼女の目を見た。

「そっか」と涙を一粒流し、無理矢理に笑おうとしている彼女の顔が見えた。

かいともそうだった。悲しい時、無理にでも笑おうとして。
涙を隠そうとしていた。

俺はあいらの方を見て、確信した。
今も昔もこの想いは変わらなかった。
かいとが俺に教えてくれたんだ。と

「なぁ、あいら…かいともな。お前みたいに泣く時、無理矢理に笑おうとしてたんだぞ。あいら…俺、小学3年の時からお前の笑顔、あいら好きだったみたいなんだ。」
そう言った後、あいらは。また涙を一粒流し、
思いっきり微笑んだ。

そして彼女はこう言った。

「私もずっと好きだった。かいとくんはね。俺がるいと仲良くしなくなっても、るいの事大切にしてやってくれよな。って小学3年の時言ってきたの」

かいとはいつも何を考えてるか分かんなくて、ヘラヘラ笑って、よく無理するやつだった。でも、大好きな親友だった。

ありがと。かいと。天国でも見守っててくれよな。

         【10年後】
10年後、26歳になった俺とあいらは

結婚した。

あいらは、「何があっても私はそばにいるよ。」と微笑んでくれた。

大好きな人にそんな事を言われるなんて思っていなかった。

なぜあの時あいらに喋りかけてあげられなかったのか。
かいとを救えなかったのか。

俺には後悔だらけだ。

でも、そんな真っ黒な世界を白色に変えてくれたのがあいらだった

大好きなあいら。

これからもずっと一緒にいてほしい。

大好きだ。

           ーENDー