翌日。

私は朝早くに起き、薬を買いに森を抜けた。
そして、薬を買い帰るために森に入ると
体が傷だらけの男の子がいた。
「大丈夫!?今、手当てするから...!」
ボロボロの男の子を見ていられず買ったばかりの薬を少し取り出し男の子に塗る。
「...やめ..ろ...」
男の子は口では嫌がっているが拒否する
力もないのかぐったりとして大人しかった。
「よし、塗り終わったよ。傷口も塞いだし
これで大丈夫かな」
「なぜ...俺を..助けた..?」
「怪我してるから」
「ただ...それだけで?」
「うん。怪我してる人を放っておけないから
ここにいたら体が冷えるし私の家近いから
私の家で休もう」
「よせ...離せ..」
「怪我が治るまででいいから」
私がそう言うと男の子は 分かった という
返事の代わりに頷いた。そして、私は
男の子の肩を持ちゆっくりと家まで歩いていく。一族の暮らしている近くまで来ると
椿ちゃんがいた。
「小鳥ちゃん!」
「あっ、椿ちゃん」
「帰りが遅いから心配してたのよ
その男の子は誰?」
「森で倒れてて怪我がひどいから
私の家で休ませる事になったの」
「ダメよ。私達は抜け忍なのよ?
伊賀の忍だったらどうするの?」
「怪我が治るまでだから...いいでしょ?」
「はぁ...分かったわ。でもその怪我だったら
1日寝てれば動けるようにはなるわ。
1日だけよ?」
「うん!ありがとう!」
私がお礼を言うと椿ちゃんも男の子の肩を持ち一緒に運んでくれた。家に入って男の子を寝かせると椿ちゃんは
「小鳥ちゃんのお父さんにこの事言ってくる
わ」
と言って行ってしまった。
しばらくすると椿ちゃんとお父さんが
帰ってきた。
「小鳥!椿ちゃんから聞いたぞ
伊賀の忍かもしれないのに..
お前は...
今回だけだぞ」
「うん!ありがとう」
父の承諾も得てとりあえず1日置いても
いい事になった。すると今まで寝ていた
男の子が目を覚ました。
「あっ、起こしちゃった?
ごめんね」
「いや...大丈夫だ」
「あっ、そういえばあなた名前なんていうの
?」
「俺は 櫻井 光。甲賀の忍だ。お前は?」
甲賀...それは伊賀と対立する忍の里
考え方も何もかもが違う。
「私は早乙女 小鳥。伊賀の忍だったの」
「だった..?という事は今は...」
「そう。抜け忍なの」
「じゃあ、ここの人達も...」
「うん、一族で抜け忍になったの」
「そうか...。」
「あっ、このことは..」
「誰にも言わねーよ。」
「ありがとう」
「そういえば、もう真っ暗だな。
小鳥は眠くないのか?」
「あ、本当だ。気づかなかった。」
「体に悪いしそろそろ寝たらどうだ?」
「うん、そうする」
と言い寝る支度をして横になると疲れていたのかすぐに眠りに落ちた。

翌日。

目を開け起き上がると寝ている光くんがいた
起こさないように静かに支度をしていると
光くんが目を覚ましてしまった。
「あ、起こしちゃったね。ごめんね」
「ん...大丈夫だ..。お、体が軽い。
これなら動けるな。」
「そうなの?良かったー」
「ああ、小鳥のお陰だ。ありがとな
なぁ、今日ってなんか用事ある?」
「うーん、今日は暇だけど?」
「じゃあ、俺についてこいよ。
お礼も兼ねて連れていきたいとこがあるん
だ」
「連れていきたい所?」
「ああ、着くまでのお楽しみだけどな」
「うん。分かった。楽しみ!」
「じゃあ、早速行くぞ」
そう言われ、皆が心配するといけないので
置き手紙を書き光くんについて行った。
光くんは森の中をどんどん進む。
すると、森がひらいた所に出た。
そこは崖になっていたがとても綺麗な景色
だった。
「わー、綺麗....」
「だろ。俺だけしか知らない秘密の場所
なんだよ」
「そんな所に連れて来てくれて
良かったの?」
「ああ、これからは俺と小鳥の
秘密の場所だ」
「ありがとう」
光くんの優しさに心が熱くなる。
「俺、友達とか仲間が居ないからさ。
よくここに来てたんだ。」
「そうなんだ。私は伊賀の忍の時は
幼馴染達とか沢山いたんだけど、
今はもう1人しか居ないな」
「なぁ、俺の友達になってくれないか?」
「え?私が?」
「ああ、嫌か?」
「ううん。私でいいの?」
「小鳥じゃなきゃ俺は嫌だ」
「ありがとう、よろしくね」
「ああ」
そうして抜け忍になって初めての友達が
出来た。
「これから、毎日ここに来てもいい?」
「ああ、待ってる」
「うん!」