本番の数日前

俺は一人で宝石店へ足を運んだ

アジアツアーは半年ほどかけて

韓国からスタートし西へと大陸を移動して行われる予定だった

愛果にそう話すと彼女はまるで自分の事の様に喜んだ

そして俺を羨ましいと何度も話した

俺も本当は初めての海外へ君と行きたかったんだ

けれど俺にはまだその力がなかった

彼女には言わなかったが

それが本当はとても悔しかった

東京と名古屋なら新幹線なら半日あれば

いつでも会いに行くことができる

けれど海外は

ひょっとしたらか帰って来ることができないかもしれない

愛果を心配させたくはないから

この不安を俺は決して口にしなかった

会えない時間

彼女が不安になったり困ったりしたとき

彼女を安心させてやりたい

そう思った時

彼女に指輪を送る事を思いついた

以前に送った指輪とは違う

彼女が誰に見せても恥ずかしくないような

そんな指輪がいい

そう思って再び一人ショップの扉を開けた

毎日通うコンビニとは違うお店はそれだけで

ステージに上がるより緊張してしまった