サックスの指運びのチェックをしながら

愛果の事を思い出していた

最近はスタジオでこうして

練習をすることができる

こうして夜遅くまで音のチェックができる

名古屋に住んでいた時は

バイト前の夕暮れに

土手でサックスの練習をして音を確かめた

初めて愛果に会ったのも

その時だった

愛果とはその後もよく一緒に土手で

時間をすごした

今はそれがとても懐かしい

スタジオの中にいると季節の移り変わりや

過ぎて行く時間が判らなくなってしまう

だから

時々、一人で隅田川の公園に行き

土手の公園で川の流れに向かって

サクスフォンを思い切り鳴らしにいく

そんな時も愛果が隣にいたらといつも思ってしまう

名古屋で一緒に過ごした

あの日々

そんな事を思い出して演奏をしていたら

美しいメロディーが出来上がった

一緒に音調節をしていた皆もいいねと言ってくれた

「次に愛果がライブに来たら演奏したらどうかな

その曲。」

その場にいた全員が同じ気持ちになってくれた

俺の演奏にみんな即興でその場でアレンジを加えて

メロディアスな美しい曲に仕上げてくれた

そうだ

今俺にできることは

これなんだ