虹のふもとの夢の先



「あれ、アキ?何書いてるの?もしかしてラブレター?


てかお弁当食べるの早いね」


「えへへ、まあね」


優香里は書いている手紙を覗き込んだ。


「その筆箱に入ってるの、カッターじゃない?


何に使うの?」


志穂は咀嚼しながら、


私の筆箱のチャックから覗いている


カッターをまじまじと見つめた。


「これね、美術部で作品作るのによく使うんだ」


私はこれ以上見られないように、そそくさと


カッターを筆箱の奥に押し込んだ。


「なーんだ、そうだったんだ。


刃の先に付いてたのも赤い絵の具か。


びっくりしちゃったよー」


志穂はペットボトルのミルクティーを飲み干した。


「ねえ、アキ。何かあったらうちらに言ってね。


アキっていつもほんわかしているけど、


あまり、自分のこと話さないじゃん?」


優香里はいつもと違う優しい声色で私にそう言った。


3人の視線が私に向けられる。


「うん、そうね。ありがとう」


自分でも驚くくらい、淡々とした声が出た。


「じゃ、私そろそろ戻るね」


お弁当のバッグと、したためた3通の手紙を持って、


私は自分の席に戻った。