「言っとくけど、中身覗いてないしお金も取っちゃいないから、疑うなよ」
「……疑わないよ、そんなこと」
「え?」
「三坂くんがそんなことするわけないし、わざわざ預かっててくれた人に、疑ったりしないです。
と、とにかくありがとうございました!」
緩まった三坂くんの手を離し、
私は逃げるように教室に向かった。
私、変な事言った?
間違ったこと言ってないよね?
心臓がバクバクする。
まさか三坂くんが、
私の財布、持っててくれてたなんて。
盗まれちゃいけないからって、
わざわざ嫌いな人のものでも気にかけてくれるなんて。
三坂くんがいろんな人に好かれているのも分かる。ものすごく分かる。
でも、多分、
三坂くんが私に声をかけるなんてこと
これから先一度だってもう無いんだろう。
今日はたまたま、
財布がきっかけになったけれど。
そんなきっかけが無いと、話す意味も義理もない存在。それが私。山田栞。
『話しかけたいと思わない』
三坂くんがそう思うくらいなんだもの。
学校での私は、
一人ぼっちが割に合ってる。


