海の無い、山にかこまれた田舎だけど。
それなりに生徒数が多い深山中学校。
三年生に進級して一週間…関西方面に3泊4日の修学旅行。

新幹線と私鉄を乗り継ぎ1日目の目的地、奈良に到着した。

車内では迷惑な程に騒いでいた男子達。
メイクに余念がない女子達。
修学旅行だからって浮かれ過ぎ。



私、高山花子。
祖母がロシア人のクォーター、会った事も名前も知らないけど。その祖母から受け継いだであろう色素の薄い髪色と瞳。この容姿で田舎の学校では目立つ存在らしい。

色素の薄さよりもハッキリとした目鼻立ちなら良かったのに…
それでもメイクをするとムダに派手な顔になるのはクォーターだから仕方ないとあきらめて無色透明な薬用リップクリームを愛用中。



私鉄の駅の改札を出ると引率の先生達がクラスごとに点呼してる。
私は目立つ容姿だから担任にすぐに発見されて点呼も免除、今夜の宿泊先に小雨が降り出した道を歩き出した。

『花子ちゃん、一緒に行こ。』
私の周りに女の子達が集まり、自然と団体行動。
さっきよりも雨脚が強まってきたけど、宿泊先は目の前。今さら大きなバッグから傘を出しても意味がない感じ。