「高校に上がって

俺が東京の大学目指してるの知ってから

光輝も高田も必死になって俺の後押ししてくれた。

あいが記憶を取り戻せなくても

また俺のことを好きになってくれるように。」

あいに話しながら

高校に上がってから今までのことを

思い出していた。

あの二人はいつも臆病な俺の背中を

押してくれた。

入学式のとき。

「4人1組を作って…」

あいの方を見るともうグループが決まりかけていた。

「田島くんたちさ、よかったらうちらと‥」

女子二人組が話しかけてくる。

「ったく、仕方ねーな」

光輝は小さくそう呟き、声を張り上げた。

「白石さーん!高田さーん!

一緒のグループになろ!」

勉強合宿のときだって。

「あいは、ずっと好きな人がいるんでしょ!」

高田の声が響き

思わずあいの方を見た。

そんな話、高田からは一度も聞いたことがない。

「気になるんだろ?

大丈夫!わかってるから!」

そう言って光輝は走り出す。

「何の話してるの?」

〜〜

「初恋の人が忘れられないの」

その言葉を聞いた瞬間、安堵とともに

嬉しさが込み上げる。

『あの約束、覚えていてくれたんだ。』

「いつか会えるといいな。」

光輝の言葉に俺と高田は

涙を堪えるのに精一杯だった。


勉強合宿の花火のときも。

「合宿最後の夜だぞ!

お前ら全然、仲良くなれてねーじゃん!

ほら!行くぞ!」

手持ち花火を持った光輝と一緒に

あいと高田がいるところへ走る。

「俺らと一緒に花火しようよ!」

光輝が言った瞬間、周りに人が集まってくる。

「「あーあ」」

光輝と高田が声を合わせて言う。

みんなに無理矢理連れられ

遠くなっていくあいを見つめた。

手持ち花火に火を付け、ぼーっと眺める。

『ふたりで花火できたらな…』

そこに高田がひとりでやってきた。

「おい!ばか!

何ひとりぼっちにさせてるんだよ!」

光輝が怒ると

「あんたらがモテるからいけないんでしょ!

…それより、知ってた?

あいってこっちの方が好きなんだって!」

線香花火を見せつけながら

まるで自分だけの知っている秘密を

誰かに話すように嬉しそうに高田は言った。

「よし!俺に任せとけ!」

そう光輝が言うと周りの生徒から

次々と線香花火をもらいに行く。

握りしめた大量の線香花火を俺に渡しながら言う。

「これ持って行け!

それでゆっくり話して来い!」

ふたりに背中を押されながら

俺はゆっくり歩き出す。

あいが告白されたとき。

「白石さーん!初恋の人がうぉ!」

光輝の口を押さえていると

「ハァハァ、まーくん!大変!あいが告白されちゃう!」

〜〜

急いで教室を出ようとした時


「待って!」

高田に呼び止められる。

「なんだよ。」


「あいを幸せにしないと
絶対、許さないんだから。」

そう言う高田の顔は涙に濡れていた。

そうだよな。俺らの想いはいつも同じなんだよな。