『止めてどうする?

…告白する?

いや、分かってるじゃないか。』

嬉しそうに初恋の人の話をする
白石の笑顔を思い出す。

『俺は白石の初恋の人〝まーくん〟には
勝てない。

だから諦めるって、遠くから見守ってるだけで
良いってそう決めたじゃんか。


…でも他のやつに取られるくらいなら。』

自問自答を繰り返しながら

駐輪場に急ぐ。

どんどん速くなる鼓動が
更に俺を焦らせた。

駐輪場に着くと
男子生徒の声が響いた。

「良かったら俺と付き合ってください。」

臆病な俺に比べて
その男子生徒は素直に想いを伝えている。

『コイツにも負けてんじゃん…俺。』

情けなくなり、咄嗟に物陰に隠れる。

『2人が付き合ったらどうしよう…。』
諦めかけたその時。

「ごめんなさい。

私、他に好きな人がいるの。」

白石が答えた。

「…そっか。それってどんな人?」

安堵とともに虚しさが込み上げてくる。

それは白石の初恋の人〝まーくん〟のことで俺ではない。

「その人はいつも優しくて笑っていて…」

もう諦めて教室に戻ろう。

そう思い、ゆっくりと歩みを進めた瞬間、
白石は言葉を続けた。

「いつも私のことを見守ってくれて…

叱ってくれて、助けてくれて」

嬉しそうに語る白石を見つめる。

俺は溢れそうな涙を必死で堪えた。

「でも本当は弱くて泣き虫で…」

俺がいつも全力で守りたいのは
必死で隠してる弱い自分をさらけ出せるのは

…いつだって白石だけだ。


「でも片思いなんだろ?だったら俺と…」

男子生徒が白石に触れようとする。

『触んなよ。

俺がずっと思い続けてる大切な人に。』

身体が勝手に動く。
白石と男子生徒の間に割って立つ。

「ごめん。

こいつ俺んのだから。」

男子生徒を睨みつけながら
ずっと胸に秘めていた言葉が溢れた。

白石の手を引っ張り連れ出す。

いつだって一緒に居たい。
手放したくなんかない。

そんなこと分かってたのに…。


もう後のことは考えない。

素直に伝えよう。

あの場所で

ちゃんと君に。