駐輪場につくと下校時の生徒が数名いた。

周りの人に隠れるように広尾くんは

「昼休みたまたま見たんだ。

白石さんがいじめられてる子を助けるとこ。

それ見てからずっと白石さんのことが

気になってた。

良かったら俺と付き合ってください。」

まっすぐに気持ちを伝えてくる広尾くんに

申し訳なくなる。

「ごめんなさい。

私、他に好きな人がいるの。」

「…そっか。それってどんな人?」

私は初恋のまーくんのことを思い浮かべた。

「その人はいつも優しくて笑っていて。」

話していくうちに気がつくと

田島くんのことを思い出していた。

〝大丈夫?〟

中学生の頃、私を守ってくれたこと。

〝具合悪いんでしょ?

あそこの木陰のベンチで休もう。〟

〝俺もこっちの方が好き〟

勉強合宿で見守ってくれてたこと。

「いつも私のことを見守ってくれて…」

〝…だからもっと自信持ちなよ。

周りの目なんか気にしないでさ!〟

「叱ってくれて、助けてくれて」

〝もう少しだけこうさせてて〟

勉強合宿で抱きしめてくれたこと。

教室で泣く田島くんのことを思い出す。

「でも本当は弱くて泣き虫で…」

ハッと我にかえる。

「でも片思いなんだろ?だったら俺と…」

広尾くんが私に手を伸ばした瞬間。

その手から私を守るように。

「ごめん。

こいつ俺んのだから。」


そう言って私の手を引きながら

田島くんは歩いていく。

『今の話、聞かれてたかな?

聞かれてたら恥ずかしい…!』

「田島くんどうして?」

田島くんは黙ったまま私を引っ張って歩いていく。

駐輪場にいた生徒たちが次々に私たちを見る。

「あれ田島くんと白石さんじゃない?」

「ふたりって付き合ってるのかな?」

「えー!ショックなんだけど!」

生徒たちの悲鳴のような声が聞こえてくる。

『どうしよう?誤解されちゃう…』

「田島くん待って!どこに行くの?」

田島くんに尋ねるが答えてくれない。

校庭まででると

「おい!」

岡田くんが立ちはだかる。

「なんだよ。どけよ。」

「これ。忘れ物。」

そういって田島くんに鞄を渡す。

「…ありがとう。」

「あいの鞄は家に届けておくから。

いってらっしゃい!」

美咲が岡田くんの後ろからひょこっと出てきて言う。

「え?美咲、行ってらっしゃいってどこに?…」


「頑張れよー!」

『あの二人いつの間に仲良くなったんだろう…』

岡田くんと美咲に見送られながら

学校を後にする。