「え、いない?」

私は校長先生に挨拶をしたあと、2年生の学年主任に挨拶をした。
次は担任の先生に挨拶をしようと居場所を訊ねると、学年主任から意外な答えが返ってきた。

「基本的に先生は全員職員室にいるんだが…君の担任はあんまり職員室には姿を現さない人でね。今もおそらく社会科準備室にいるよ」

「そうなんですか…」

変わった人なのだろうか?
込み入った事情かもしれないので、それ以上のことは聞けなかった。
私は学年主任にお礼を言い、教えてもらった社会科準備室に向かう。

私の担任は”本郷(ほんごう)先生”と言うらしい。
地理担当で20代の若い先生らしい。
どんな変わり者なんだろう。
変な人だったら嫌だな。

私は身構えながら、教えられた別館3階の一番奥の扉の前で立ち止まる。
別館にはあまり使われない教室が多いらしく人気も少なく、すれ違った人数も数えるくらいだった。
”社会科準備室”の”社”がはげていて、殆ど消えて見えない。
誇りも溜まっていて、あまり掃除されていない感じがした。

私は気持ちを整えてから、ドアをノックする。