「いま、彼女はいますか?」

学校でそんな質問するなよ。

「いませんよ」

「本当ですか!?こんなに格好いいのに」

「それはどうもありがとうございます」

「なら…私が立候補してもいいですか?」

「え…」

僕は立ち止まり小川先生のほうを見ると、
いつもの少し可愛い子ぶった作ったような表情とは違って、真剣なまなざしをしていた。

小川先生の気持ちは、薄々、察してはいたが、まさかいま、そんなことを言われるなんて。
不意をつかれた。

「悪いですが、今は恋愛をするつもりはありません」

誰かと付き合ったら、雪花のことを忘れられるだろうか。
そんな気持ちが少しよぎったが、すぐに振り払う。

そんな中途半端な気持ちで始まったから、
あんなに雪花を傷つけてしまったんじゃないか。
こんなことを繰り返してはいけない。


「どうしてですか?」

ズカズカと踏み込んでくるな。この人は。

「それは小川先生には関係のないことです」

そういって突き放す。



「忘れられない人がいる、とか?」

「……」


こんなにすぐに当てられるとは思わなかった。
意外と鋭いな。