恋愛境界線

妹…

そうだよね。
第3者から見たら、私と隼人さんって完全に兄妹にしか見えないよね。

こういう場合って、
”違います。彼女です!”って言っても良いのかな。

いやいや、私いま制服じゃん。
ここで”彼女です!”とか言っちゃったら、何か色々まずいよね。
最悪の場合、援助交際とかロリコンとか思われる?

隼人さん、
女子高生と付き合ってるとか、知られたくないよね…。

て、いうかそもそも隼人さんが”妹が資料を届けに来る”って伝えてたかもしれない。

”妹”ってことにしておくのがベストなのかな。
それで、良いんだよね…?





「は…」

”はい”って言おうとしたそのとき、ナースステーションの奥から懐かしい声が聞こえ、こちらに向かって歩いてくる。

「あら、雪花ちゃん?」

「今田さん…!」

声の主は1年前、入院したときに私の担当をしてくれた看護師・今田さんだった。以前と変わらないままの姿でこちらに歩いてくる。

「あら、今田さんお知り合いですか?」

「1年前、1週間だけここに入院してたのよね」

今田さんの顔を見て、私は胸を撫で下ろす。
何て言ったって、今田さんは私と隼人さんのことを知っているからだ。

「そうだわ。雪花ちゃん、いま時間ある?
私、もう仕事終わるからちょっと話をしない?
ここの1Fのカフェ、意外と珈琲が美味しいのよ」

そう言って、今田さんは優しげな表情で微笑んだ。