最上階ロマンス

「お前、なに? その量」

その、頭の上から聞こえた声に、実咲は、その声が聞こえた方を見上げる…

「…あ…、終わったの?」

目の前の席に、腰を下ろした琢磨…

実咲が、取り分けたマンゴーの皿を指さし…

「これ、凄い量じゃね? 好きなの?」

「あ、うん。」

琢磨の顔を見ると…、言いようのない怒りにも似た気持ちが湧き上がりそぅだった…

実咲は、視線を逸らしながら…

実咲は、珈琲のみを持ってきていた琢磨に…

「何か、持ってくる?」

「いや、いい。珈琲だけで。この後、仕事行くから…」

と、実咲が持ってきたマンゴーを口にする…

「ちょっと! それ、あたしの…」

「これだけあるんだから、いいだろ? 1つくらい」

そぅ言い返されると…、自分が子どものようで…何も言い返せなくなった…

実咲は、最後に取っておいたマンゴーをフォークで刺し…、その様子を眺めていてる琢磨と視線がぶつかった…

「お前ってさ、幸せそうな顔して食べるよな?」

「…っえ? なに、それ?」
《人が食べるとこを見てるなんて…、なんて悪趣味なっ!》

「いゃ…。
ウチなんて、親父が揃わないと…メシにもありつけなかったし。
物音1つ立てるな!って言われたから。
食事の時間は、会話ひとつ無い…」

「それ…は…、凄いねっ」
《それは、生き地獄に近いかも?

ウチは、楽しかったな…。。2人とも、食べることが好きだったし…

会話が尽きること、なかった…》


実咲は、思わず…亡くなった両親のことを思い出した…

これまで、思い出さないように…してきたつもりだったのに…


「あ、さっき!
凪子さん、来てたょ。大学があるって、さっき帰っちゃったけど」
《話題、変えなきゃ…っ!

私、この人のことでムカついてたのに…、フルーツやデザートのケーキ食べてたら…忘れちゃいそうだったゎっ!》

実咲の言葉に、琢磨は【ふぅん】と、言ったきり…いくつ目かのマンゴーを口にする…。。琢磨の反応に、実咲は【無反応?】と、思ってしまったが尚も続けた。。

「…【お友達になって】って、言われたから。LINE交換したの…
可愛いよね? 天使みたい…」

と、わざと鎌をかけるような言い方と、悪意を含んだ笑顔をわざとしてみせた…

「ふぅん。ま、いいんじゃない?」

と、琢磨の方は興味なさげ…に、それだけ言った…

その、琢磨の反応に実咲は少しイラ付きながら…

「……っ」
《なに、それ?

あんな純粋な子を騙してて…、良心がないの?》

と、微かに頬を引き攣らせながら…

「彼女、付き合ってる人がいるのかな?」

その、実咲の言葉に…琢磨は…

「さぁ? 俺が知る訳、ないだろ?」

「……っ!」
《な…、なぁーにを言ってんだ?

この男は…っ?


あの子が、好きなのは…アンタなのよ…っ!》


と、口が滑りそう…になった所を、慌てて自分で制止し…

「……っ」
《ヤバい…。黙ってて…って、言われてたんだった…

凪子さんのお父さん、厳しい…とかで…、結婚した男性と、そういう関係だった…ってのを知るワケにはいかない…って、言ってたな…

つまりは、結婚前に…他の男性と付き合うの、反対されてる…って、ことなのね?》


「じゃ、俺、荷物取りに戻ってから仕事行くけど…。お前は、ソレ、食べてから…だろ?」

と、腰を上げた琢磨…まだ、実咲の目の前には、フルーツが乗った皿がある…

「あ、うん。」

【もぅ、行くの?】と、思った瞬間…琢磨は、実咲の頬にキスをした…

それも、周りへのカモフラージュ…ということは、実咲も解っていたが…、微かな動揺が隠せない…


「じゃ、仲良くなるのはいいけど。せいぜい…バレないように…ね…っ!」

そぅ、実咲の耳元で囁いた…

瞬時に、耳元まで赤くなった実咲…琢磨は、その反応に笑いかける…

「行ってらっしゃい!」
《あ~…っ!

もぉっ! こっの…悪党がっ!

ホント! ムカつくっ!》

琢磨は、実咲に軽く手を振り…颯爽とラウンジを出ていく…

その、後ろ姿を見送りながら…。。実咲は、琢磨が先ほど言っていた…【家族団欒】について、思い出していた…

「……っ」
《家族…、あんまり仲良くないのかな? 漆原くんの家…

お父さん、厳しい人…って言うのは、彼の口から何度か出てるけど。。


なんか、そういう話しをしてくれるなんて…、意外…っ》