「流石に私もアニメの男の子を本気で好きになったりしないよ。そこはちゃんと分かってるって言うか……。アイドルのファンの人みたいな感覚」


「俺の事は……?」


「愛空は……ファンじゃなくて……」


「じゃなくて?」


「その……好きな人、だし……」


赤くなってそう言うと愛空に更にきつく抱きしめられた。


「光希可愛すぎ!!だから離せなくなる!!」


その言葉に耐え切れなくなって私はなんとか愛空の腕から抜け出した。


「そ、それより愛空。ご飯は?」


「まだ」


「私が作ったので良ければ、食べる?」


「え!?食べる!!」


嬉しそうに目を輝かせる愛空を可愛いと思ってしまう私も相当愛空が好きだ。


明日のお弁当に入れようと思って多めに作っておいたから充分におかずはある。


愛空の前にご飯を置くと愛空は嬉しそうにした。


「いただきます!」


「どうぞ……」


自分の手料理を目の前で食べられるのって、なんか緊張するな。


ドキドキしながら愛空の反応を窺う。


愛空は驚いたように目を見開いた。


「めちゃくちゃ美味しい!」


「本当?」


「本当!光希って料理本当に上手だよね」


「そう言ってもらえると嬉しい」


ホッとして私もご飯を再開する。


テレビでは相変わらずアニメが流れていた。


こんな環境を許してくれる彼氏なんて、この先絶対に現れないだろう。


むしろ、愛空と別れてしまったら私に彼氏なんて一生出来ないだろう。


「そう言えば光希」


「何?」


「今度会社で旅行あるじゃん?」


「そうだね」


「光希は参加するの?」


「……本当はしたくないけど」


そう言って箸を置く。


深くため息をつくと愛空が心配そうにした。


「どうしたの?」


「ううん、別に何もないよ。愛空は心配しないで」


笑顔を向けたつもりだった。


でもどうしてか、愛空には分かってしまうんだ。


私が無理やり笑っているって。


「心配するに決まってるでしょ。光希が辛そうなのに放っておけるわけない」


愛空が私の手を握る。


私は俯いた。