資料室で先輩に頼まれた資料を探していると資料室に誰かが入って来た。


また伊藤くんが来たのかと思って身構えると、やって来たのは愛空だった。


「愛空……」


「大丈夫だった?」


そう聞かれて頷く。


「さっきはありがとう。伊藤くんの事、嫌いじゃないけどちょっと苦手で……」


「知ってる。光希ってああいうテンションお化け嫌いだもんね」


「だから嫌いじゃ……」


いや、もしかしたら嫌いなのかもしれない。


伊藤くんには悪いけどあまり関わってもらいたくないし。


「それよりも何か探し物?」


「あ、うん。香山(かやま)先輩に頼まれてるものがあって」


「俺も一緒に探そうか?」


「そ、そんなの悪いよ。愛空には愛空の仕事があるし。邪魔するわけにいかない」


「ほんとに真面目だなー。ちょっとは俺に甘えれば?彼氏なんだし」


『彼氏』という単語にドキッとしてしまう。


すると愛空が私を壁に押し付けた。


この体勢は壁ドンというもので、目の前の彼氏は綺麗に微笑んでいる。


「あ、愛空……?」


「伊藤に言い寄られてるの見るだけで腹立つのに、光希は意地悪だし。俺のこの気持ちはどうしたらいいのかな」


「な、何……」


「無自覚に他人を引き寄せるの、ほんとに心配になる。光希は俺の彼女なのに」


そう言って愛空は私のシャツのボタンを外していく。


「愛空!?」


「はい、黙る」


愛空が首筋に噛みつく。


「わ、ぁ……」


自分の口から変な声が出て慌てて手で押さえる。


愛空は満足すると外したボタンを元に戻して笑った。


「これ以上したら我慢出来なくなって、ここで光希抱いちゃうから」


「!?」


「誰か来て光希の可愛い声聞かれるのも嫌だし、これで今は許してあげる」


なんで怒ってるのか、なんでいきなりこんな事をしたのか分からなくて混乱する。


そんな私に愛空は微笑んで近くの資料を手にした。


「はい。これ」


「え?」


「香山先輩に頼まれてたの、これでしょ?」


そう言われて資料を確認すると確かにそうだった。


なんでわかったんだろう。


「香山先輩が今してる仕事で必要なものってこれかなって思っただけ」


私の考えも簡単に見破ってしまうこの人は本当に凄い人だな。


私は小さく息をついてお礼を言った。