「ねぇねぇ、相原先輩。どうしてそんなに逃げるんですかー?」


朝から私は困っている。


原因はこのイケメン。


資料室に行こうとしていたら何故か私について来たのだ。


このイケメンは私の後輩で伊藤(いとう)春輝(はるき)くん。


女の子が大好きなのか、しょっちゅう女の子に話しかけている。


人懐っこいから沢山の人に可愛がられている。


確かに可愛い顔立ちしてるし、コミュニケーション能力が高いから気に入られるのも分かるけど、私は苦手だ。


だってなんかグイグイきて怖いもの。


私はひたすら無視して資料室に向かった。


「相原せんぱーい?俺の事無視するのやめてくださいよー。いくら俺でも傷つくからさー」


絶対にそんな事ないでしょうと思いながら私は何も反応せずに目的地へ向かう。


すると曲がり角で愛空と出くわした。


「おっと」


「!!」


「相原さん、どっか行くの?」


微笑みながら質問してくる愛空。


本当に今日もイケメン。


朝も思ったけど、ていうか毎日思ってるけど。


「資料室に、ちょっと……」


そう答えると後ろで伊藤くんが不満げな声を出した。


「ちょっと相原先輩、なんで鹿野先輩には返事するんですか!俺の事は無視するくせに!」


だって苦手だから、とは言えない。


下を向いて目を逸らすと愛空が察してくれて伊藤くんの前に行った。


「はいはい、伊藤。今日も元気なのはいいけど先輩の事困らせるなって。あと仕事の邪魔しない」


「うう……。鹿野先輩に言われたら聞くしかない……。あ!てか鹿野先輩、いつになったら俺と飲みに行ってくれるんすか!!」


「気が向いたらって言ったじゃん」


「それっていつになるんですか!!」


伊藤くんの気を私から逸らしてくれて、それから私に目配せした。


私を助けてくれたんだ。


私は軽く愛空に頭を下げて資料室に向かった。


何とか伊藤くんから逃れる事が出来てホッと胸をなでおろす。


正直伊藤くんのような陽キャは苦手だ。


最初から伊藤くんはああやって私に絡んできた。


怖くて何の反応も出来なくて、今日までいるわけだけど。


なんで私に構ってくるのか謎だ。