" 泥棒おんな" "浮気者" "整形" "嘘つき"


毎日のように耳に入る言葉の数々。
高校生になって2年目の春。

きっといちばん輝いてて何もかもが楽しいそんな時。
いつからだろう。私の毎日がこんなにも苦しくなったのは。

忘れちゃったよ。

「藍川さん 英語のノート見せて欲しいんだけど!」

隣の席の男子が申し訳なさそうな素振りをしながら笑顔で話し掛けてくる。

「いいけど。はい」

「ありがとうー!」

「藍川って可愛いよな(笑)」

「それな ノート借りれたわ やべぇ」

コソコソと喋っているつもりなんだろうけど思いっきり聞こえてますよ。

「うっわーまたクラスの男子に色目使ってるんだけどきも(笑) 整形なのに良く可愛いとか言えるよね〜」

「マジそれ、あーやって沙理奈の彼氏も奪ったんだろうねー」

そして聞こえてくるもう1つの会話。
何度同じことを言えば気が済むんだよホント。

「… ねぇ、前にも言ったけど私 沙理奈の彼氏なんて知らないから。」

「は?」

「うるせぇよ、整形女。マジ両親が可哀想(笑) てか、お前みたいなの親もヤバイやつに決まってるか」

「……加藤くん、英語のノート写し終わったら机の上に置いといて。」

「おう!」

ガラッ

「うわ 逃げやがった(笑) 図星なじゃね?」

教室の方からコソコソと聞こえてくる笑い声。
目に溜まった涙がが零れ落ちる前に屋上まで全力で走る。

「ハァハァ…… なんなのっ…」