身代わり令嬢に終わらない口づけを

 ベールをあげた手をそのままに固まってしまったレオンに、ローズは落ち着かない気分になった。

(どうしよう……この顔を見られてしまうなんて……せ、せめて何か言って欲しい)

 胸の動揺は押し隠して、ローズはつん、とそっぽを向いた。

「もっと美しい妻ならよかったと、いまさら後悔しないでくださいね。こう見えても二十歳ですから、れっきとした大人です」

 ローズの言葉で、レオンは我に返ったように目を瞬く。そして手に持ったままだったベールを離すと苦笑した。

「最初に会った時に言ったこと、根に持っているのか」