身代わり令嬢に終わらない口づけを

(レオン様、好かれているのね)

 お世辞を言っている雰囲気ではなかった。外面がよくても、使用人は主人をよく見ている。その使用人たちがこう言うのなら、レオンは本当に人がいいのだろう。

(お嬢様のお相手が変な人でなくてよかった)


「いかがでしょう? とてもお美しいですよ」

 しばらくして一通り化粧を終えて鏡を渡されたローズは、そこに映った自分を見て息をのんだ。

 式用の少し派手な化粧を施されたローズの顔は、いつものベアトリスに似せたものではなく、ローズ本人の顔だった。メイドの言った通り、見違えるくらい自分が美しくなっていたが、これではだめなのだ。

(こんな……これでは、当日のお嬢様のお顔と違いすぎてしまう!)

「できたのか」

 動揺するローズの耳に、レオンの声が聞こえた。あわててローズは、ヘッドドレスのベールを顔にかける。