身代わり令嬢に終わらない口づけを

 ローズの心など知らない針子やメイドたちに、ソフィーが笑顔で言った。

「あとでレオン様がいらっしゃるそうよ。奥様をお着飾りいたしましょう」

「まあ、レオン様が」

「きっと楽しみにしていらっしゃるのね」

「ではお化粧も、結婚式のように」

 鳥のようにさえずりながら、メイドたちが楽しそうにローズを飾り付けていく。


「ベールは短いのね」

 ヘッドドレスにつけられたベールは、顔にかける方はともかく、後ろは床まで引きずるくらいが貴族のウェディングドレスとしては一般的だ。だがローズの頭につけられたベールは、腰のあたりまでしかなかった。これではまるで、町娘の結婚衣装のようだ。