ようやく肩の力の抜けたローズは、今まですました美人だと思っていたソフィーがあたふたと慌てるさまを見て、その可愛らしさに思わず微笑んでしまう。

「まあ。わたくしこそ、ソフィーがそんな風に笑った顔なんて見たことなくてよ?」

「そうでございましたか?」

 自覚がなかったのか、ソフィーが目を丸くした。

「ええ。……わたくしもね、ソフィーをはじめ公爵家の方々に失礼があってはいけないと、ずっと気を張っておりましたの」

「奥様……」

 ソフィーは困惑したように顔を曇らせた。

「そんな風にお気遣いいただいていることに気づきもせずに、奥様にお気苦しい思いをさせてしまったのですね。申し訳ありませんでした」

「そんなことはなくてよ?こちらの皆様には、本当によくしていただいています。わたくし、こちらにきて一度も不自由を感じたことなどありません」

 ばれないようにとはらはらはしているけど、とローズは胸の中だけで付け加えた。