(とても上手だわ)

 つたないローズのハープに合わせて、寄り添うようにその音は優しく流れてくる。ローズは、気持ちよく最後まで弾くことができた。

(今のは……)

 ローズは急いで立ち上がると、開け放たれていた窓から庭にでた。けれど、あたりを見回してもそれらしき影は見えない。

「奥様」

 と、急に背後から声をかけられてローズはあわてて振り返る。そこには、驚いたような顔をしたソフィーがいた。

 ローズは、顔には出さなかったが内心で非常に焦った。

(み、見られちゃった……!)

 ソフィーが帰ってくるまでの間ほんの少し触るだけのつもりだったのに、トラヴェルソが合わせてくるのが楽しくてついつい時間を忘れて弾いてしまった。

「ハープをお弾きになっていたのは、奥様だったのですか?」