流れ出た音に、ローズは感嘆の息を漏らした。

「見た目だけじゃなくて、音も素晴らしいわ……」

 楽器は芸人の扱うもので貴族が弾くものではない、と伯爵には嫌がられていたが、ベアトリスはハープやトラヴェルソなどいくつもの楽器を習っていた。必然ローズも、ちょくちょくレッスンをサボるベアトリスの代わりにレッスンをこなすことになり、様々な楽器が弾けるようになったのだ。


「お嬢様にも弾かせてあげたいなあ」

 言いながら、ローズは知った曲を奏でていく。調律は完璧だったし、音の広がりもベアトリスの使っていたものとは段違いだ。

 ローズは、楽器の中でもハープが大好きだった。ベアトリスが一番好きだったのはトラヴェルソで、踊りながら吹けるから、というのがその理由だった。