「こちらの楽器も、素晴らしいものですね」

「名のある楽器師の作品だと聞いております。今夜はもう楽師を呼べませんが、ご希望でしたら明日にでも演奏を頼みましょう」

「そうね。ぜひ聴いてみたいわ」

 ソフィーが、庭に通じる大きなガラスのドアを開いた。まだ昼間の熱気が残っていたホールに、涼し気な秋の風が吹き込んでくる。

「よろしければ、夜のお茶はこちらにお持ちいたしましょうか?」

「ええ、いいかしら?」

「もちろんでございます。それでは用意してまいりますので、少しお待ちください」

 そう言って、ソフィーは音楽堂を出て行った。ローズは一人になると、ハープに手をかける。しばらくあたりをうかがってから、そこに置いてあった椅子に座った。

「ちょっとくらいなら、大丈夫よね」

 ハープを抱きかかえるように傾けると、ポロン、と片手で弦を撫でる。