身代わり令嬢に終わらない口づけを

(またあの執事の入れ知恵かしら。それとも、ご自分でお考えになったのかしら)

 ローズは、どちらかといえば前者のような気がした。ローズの見る限り、レオンは、あまり装飾の事に関しては興味がないように見えたからだ。

 そうは思うが、暗い庭一面に小さな明かりがゆらゆらと灯る光景は、ひどく幻想的で美しかった。食べきれないほどの甘味やむせるほどの花よりはよほど、素直に綺麗と思える。

(レオン様は、この光景をご覧になったことがあるのかしら。もしご覧になったら、一体、どう思われるのだろう)

「あのランプの明かりを近くで見てみたいわ。食事のあとで、お庭に出てみてもいいかしら」

「かしこまりました」

 ローズが食事を終えて庭に出てみると、たくさんのランプが置いてあった。