身代わり令嬢に終わらない口づけを

(これくらいは言っても大丈夫よね。お嬢様なら、執事の言いなりの主なんてきっと許さないもの)

 レオンが大きくため息をつく。

「本当にお前は、気の強い女なのだな」

 思わずもれたらしいつぶやきが聞こえたが、ローズは聞こえないふりをしてお茶のカップを手にした。

 わかった、とレオンが言ったあとはまた二人の間に沈黙が降りる。自分のお茶を飲み干すと、ローズは早々にレオンの部屋を後にした。

  ☆

 その夜、自分の部屋で夕食をとっていたローズは、部屋から見た暗い庭のあちこちにちらちらと明かりが見えることに気づいた。

「あれは?」

 給仕をしてくれていたソフィーに聞くと、彼女はローズの視線を追って窓の外を見た。