身代わり令嬢に終わらない口づけを

「わたくしも、こんなには……」

「女性というものは、甘いものが好きなのではないのか?」

「好きか嫌いかといえば好きですけど」

「では、食べるがいい」

(なんなのこの人……)

 お茶を入れているエリックの手が微かに震えているのを見てローズがちらりと見上げると、その執事はどうやら笑いをこらえているようだった。

 ローズは、す、と目を細めた。


「まあ。女性は甘いものが好きなどと、どちらからお聞きになりましたの?」

 レオンは、ちらっと、エリックに視線を動かした。

(やっぱり)

「どこかの知らない女性たちと同じに扱われるのは不愉快です。わたくし、甘いものは好きですが、無駄は嫌いです」

 ベアトリスがよくやっていたように少し勢いをつけて言うと、レオンは虚をつかれたように黙り込んだ。