身代わり令嬢に終わらない口づけを

「失礼します」

 入ってきたのは、先ほどのエリックという執事だった。ワゴンからいくつもの焼き菓子をテーブルに並べていく。

(ずいぶんと大食漢の方なのね)

 ローズが見ても、その量は二人で食べきれるものではなかった。レオンがこれほどに食べるのならば、今朝のあの量ももしかしたら大げさでなく適量だと思ったのかもしれない。


「甘いものがお好きなのですか?」

 ガゼボでお茶を飲んでいた様子ではそういう風には見えなかったので、ローズは聞いてみる。

「いや、俺は食べない。お前の分だ」

「えっ」

 うっかり声をあげてしまってローズはあわてて口を閉じた。