身代わり令嬢に終わらない口づけを

「ちょうど一休みしようと思ったところだ。エリック」

「はい」

 エリックと呼ばれた執事の青年は、うなずいて部屋を出て行った。



「わたくしはお邪魔にならぬよう、失礼致します」

「せっかくだから休憩につきあえ」

「はあ……」

 ベアトリスが見つかるまでは極力顔を合わせないでいようと思っていたのに、どうしてこうも予定が狂うのか。

 仕方なく、示されたソファにローズは腰を掛けた。正面にレオンが座る。


 沈黙が二人の間に落ちる。レオンは、じ、と座ったまま何も言わなかった。

(……何を話せばいいのかしら)

 ベアトリスの世話をしながら、一応ローズも貴族の風習などは身につけてきたつもりだ。けれどこんな時にどういう話をしたら的確なのかはよくわからない。なのでローズも黙ったままでいた。