身代わり令嬢に終わらない口づけを

「気にいらなかったか?」

「そうではありませんが……」

 うまく言えずにローズは口ごもる。ローズ自身、人からこんな贈り物をもらったことなどないのだ。どう言ったら失礼にならずに断れるのか、うまい言葉が浮かばない。


「レオン様」

 と、後ろで控えていた執事の青年が口を開いた。

「ですから、ほどほどが大事だと言ったではないですか。量よりも質ですよ。適切な時にたった一つの贈り物の方が人の心を打つものです」

「そういうものか」


 助け舟を出してもらったのはいいが、この執事の発言もかなりのものではないだろうか。こっそり目を向けると、ローズの視線に気づいた執事が、こちらもこっそりと片目をつぶって合図してきた。

(ちょっとレオン様とは違う性格みたい)


「では、これで……」

 ローズが言いかけると、レオンは立ち上がった。