身代わり令嬢に終わらない口づけを

 その後のんびりと館内を見回って部屋へと戻ったローズは、今度は部屋中が様々な花で埋め尽くされているのを見て目を丸くした。


「これは……」

「レオン様からの贈り物でございます」

 部屋でまだ花を活けていたメイドの律儀な答えに、ローズはげんなりする。花は嫌いではないが、これほどの量はさすがにむせ込むのを止められない。


「この量を……ですか?」

「はい。温室の中にあったものと、あとは市場で少し」

(なんでこう、適量ってものがわからないのかしら、あの人)

 なるべくかかわりを持ちたくないローズにとって、これは余計なお世話以外のなにものでもない。はあ、とローズは小さくため息をついた。