身代わり令嬢に終わらない口づけを

(やっぱり、このために、せっせとお嬢様の採寸をやってたのね)

 一度に採寸を終わらせると怪しまれると思ったのだろう。幾度にも分けてベアトリスの身体の採寸は行われていた。変だな、と思わないこともなかったが、デザインの違うドレスを何着か作るのだろうとあまり気に留めていなかった。


「最終的な仕上げはこちらに来てから、と聞いておりますので、明日からこの館のもので仕上げをしてまいります」

「ええ、お願いね。それにしても、本当に綺麗……」

「そうでございますね。きっと奥様にお似合いになると思いますよ」

「そうね」

 うっかり同意してしまってローズはあわてて咳ばらいをしてごまかした。ソフィーはわずかに怪訝そうな顔をしたが、それほど気にした様子もなかった。

 今はローズがベアトリスなのだ。気を緩めると、他人事のように話をしてしまう。

 気をつけなければ、と、改めてローズは気を引き締めた。


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