身代わり令嬢に終わらない口づけを

「こちらは奥様のお衣装のお部屋でございます」

 案内してくれたのは、ソフィーというメイドだった。彼女が、レオンのつけてくれたベアトリスの専属メイドだ。きびきびと他のメイドに指示を出しているところを見ると、まとめ役のような地位なのだろう。受け答えもしっかりしていて、彼女の教養の高さをうかがわせる。美人だが、それゆえに少し話しかけにくい雰囲気を持ったメイドだった。

「まあ……」

 その部屋に入ったローズは、思わずため息をもらす。


 部屋の真ん中のトルソーにかけてあるのは、真っ白いウェディングドレスだった。ベアトリスの結婚式のために用意されたものだ。

 体の線をなぞって床に流れ落ちていくドレスは、裾を長くひいた美しいシルエットをしていた。細かいレースが窓からの光できらきらと輝いている。ローズでなくとも、これを目にした女性なら誰でもため息をつきそうなドレスだった。