ローズは、カーライル公爵の妻、つまりレオンの母親がすでに亡くなっていることを思い出した。この様子だと、おそらく姉や妹もいないのかもしれない。だから、レースのカーテンや凝った装飾の鏡台などを見たことがないのだろう。そういえば、兄弟はいるのだろうか。あわただしく結婚が決まったために、それすらもローズは聞いていなかった。

 考えていると、レオンは目の前にメイドが置いたお茶を口にする。さらにテーブルの上に置かれた焼き菓子を一つ手に取ると口に放り込んだ。

「いつも思うが、菓子というものは甘いだけで歯ごたえも何もないな」

(はい?)