人目があるのは気にはなるが、伯爵令嬢なので仕方がない。ローズだってさんざん、ベアトリスに一人で出歩くなと文句を言ってきたのだ。けれど、自分がその立場に立ってみると、つねに誰かに見られているという状況は落ち着かないものである。

「これはちょっと、うっとうしかったかもしれないわね」

 わが身を振り返って呟くと、ローズは少し反省した。

 のんびりとあたりを見回しながらローズがお茶を飲んでいると、館の中からレオンが出てくるのが見えた。とたんに、ローズは緊張する。

(こっちにこないといいけど……)

 ローズの期待に反して、どうやらローズに気づいたらしいレオンがまっすぐにガゼボに向かってきた。

 視線をそらしたまま気づかないふりとしていると、レオンが声をかけてくる。