「それは、結婚式の後にしてください。わたくしたちは、まだ夫婦ではありませんから」

 ベアトリスとレオンが仲睦まじいにこしたことはないのだが、あくまでそれは結婚後のこと。今のところ少しくらいローズが冷たくしておいても、きっと戻ってきたベアトリスならうまくやれるだろう。

 と、なかば八つ当たりのようなことをローズが考えていると、微かに落胆の響きの混ざったレオンの声が聞こえた。

「そうか」

 その声を聞いて、ローズは、少しだけレオンに関して認識を改める。


 威圧的な態度は鼻につくが、どうやら妻となるベアトリスに寄り添いたいという気持ちはあるようだ。

(もしかしたら、いい人なのかも)

「……わたくしは」

 バラの花束に視線を落してと、ローズは言葉をさがす。