「もしかして、私、レオン様のことが……」

「好きなのよ。あなたは彼の事を。ね、ローズ」

 ベアトリスが優しく涙をぬぐってくれる。

 だが、たとえいまさらそのことに気づいても、どうにもならない。二人の間には大きな身分差の壁が立ちふさがる。彼の隣に並ぶことができるのは、ベアトリスのように身元のしっかりとした伯爵令嬢だ。短い間だから身代わりもできたが、夫婦となったらそうはいかない。


「大丈夫だよ。きっと彼も君も、お互いをあきらめなくてもいいだろうから」

 妙に明るく言った青年にローズが涙で濡れた目を向けると、ベアトリスは呆れたように言った。