身代わり令嬢に終わらない口づけを

「兄上は、すぐに飽きた、と言って二度と楽器を手にしなかった」

「お兄様にも、楽器の楽しさがわからなかったのですね」

「そうではない」

 レオンはちらりとローズに目を落とす。


「俺がこっそりとトラヴェルソの練習をしているのを知っていたからだ。子供のころから何かと兄上に比べられていた俺に、兄上も気を遣ったのだろう。時折、難しい曲などは手ほどきしてくれたから、嫌いではなかったと思う」

「優しいお兄様なのですね」

「ああ。兄上は俺の誇りでもある。……お前も、近いうちに会うことになる。いい男だ。きっと、お前も気に入るだろう」

 そう言ったレオンの眉が切なげに寄せられるのを、ローズは不思議そうに見上げた。

「レオン様?」