身代わり令嬢に終わらない口づけを

「私もよく父に言われました。伯爵令嬢ともあろうものが旅芸人の真似事などするな、と。練習を積んで上達していく楽しさを、きっと父も公爵様も知らないのですわ。それに」

 ローズは、じ、とレオンの目を見つめる。

「レオン様の音を聴いた時、私も、なんて力強く優しい音なんだろう、と思いました。そして、その吹き手はやはり、音から感じた印象そのもののお方でしたわ」

 そう言ったローズに、レオンはまぶしそうに目を細める。


「……俺よりもずっと、兄上の方が上手だった」

「トラヴェルソですか?」

「トラヴェルソでもリュートでも……やはり父上も、そんな芸人のようなまねは、といい気はしなかったようだが、兄上は何をやらせても器用にこなしていた。だが」

 前を向いたのレオンの目が、どこか懐かしいような色を浮かべる。