身代わり令嬢に終わらない口づけを

「早くしろ」

「は、はい」

 そ、とローズが手を繋ぐと、大きな手がローズの手を包んだ。ぎゅ、と握って、少し前を歩いてくれる。

(レオン様……)

 ぽうっとしながら後ろから見たレオンの耳が赤い。まわりにいる大勢の人々も、もうローズの目には入らなかった。彼女に見えるのは、背の高い後ろ姿だけだ。

(夢なら、このまま覚めないで……)


 それからローズたちは、道のあちこちにいる旅芸人たちの芸を見たり、屋台で簡単な軽食を食べたり、祭りににぎわうフィランセの街を歩いて回った。

 夕方近くになったころ、レオンがふと、ある建物の前で足を止めた


「レオン様? この建物が何か?」

「ああ、ここは……」

「あ、レオン様だ!」

 レオンが何か言う前に、建物の中から気がついたらしい子供が何人か飛び出してきた。