身代わり令嬢に終わらない口づけを

 人波にもまれながら、ローズは必死に前に見えるレオンの背中を追う。通りはかなり広かったが、それでも誰にもぶつからずに歩くことはできなかった。その様子を見て、レオンがローズに手を差し出した。

「……レオン様?」

 ローズが、きょとんとしていると、レオンが視線を逸らして言った。


「手を」

「え?」

「はぐれたら面倒だ。手をつないでいよう」

 とたんに、ローズは真っ赤になる。

「で、でも、こんな人目のあるところで……」

「誰も他人など見てはいない。何か言われたら……夫婦だと言えばいい」

 レオンの言葉にくらりとめまいすら感じたローズは、そう言ったレオンが少しだけ切ない顔をしていたことに気づかなかった。