身代わり令嬢に終わらない口づけを

 返事がないことを気にすることもなく、レオンは立ち尽くすローズを見て目を細める。

「お前は、そういう服装も似合うのだな」

 ローズが着ていたのは、持ってきた自分の服の中でも一番新しいきれいな服だった。


 何を着ようかなどと悩んだのは生まれて初めての事だった。髪も念入りにとかしたし、靴も綺麗に磨いてきた。

 最初この館に来た時は、あれほどに顔を合わせるべきではないと思っていたのに、今日のローズは、レオンと出かける約束を昨日からずっと心待ちにしていた。


(明後日の結婚式では、きっとすべてがばれてしまう。場合によっては、私も姿を消さなければいけない。こうしてレオン様と言葉を交わせるのも、今日が最後だから……せめて、一番きれいな私を覚えていてもらおう)

 言い訳のように自分に言い聞かせて、ローズは部屋を出てきた。