身代わり令嬢に終わらない口づけを

 ローズが聞くと、レオンは少し驚いたような顔になった。

「この祭りに来るのは初めてか?」

「一度見てみたかったのですが、伯……父上が許してくれなくて」


 秋まつりは庶民の祭りだ。そんなところへ貴族が行くものではない、とリンドグレーン伯爵はベアトリスがこの祭りに来ることを一度も許してくれなかった。


 なるほど、とレオンは言って、近くにあったかかしを見上げた。

「これらは、この祭りの主役でもあるかかしだ。ああやって飾って豊穣の感謝をささげた後、明日の夜にはすべて燃やして天に帰す。その周りで踊ったりもするな」

「そうなんですか! 楽しそうですね」

 浮かれたローズは、ついつい自分の口調に戻ってしまう。ベアトリス同様、ローズもこういう祭りは見ているだけでも心が弾む。

 レオンは、そんなローズの様子を楽しそうに見ながら、通りの先にあった広場に向かう。