男はローズを連れて通りを歩き出した。

「待ち合わせは、もしかして彼氏?」

「いえ、違います! 友人です」

「へえ、そうなんだ。俺も友人と待ち合わせなんだ。よかったら一緒に食事でもどう? もちろん、おごるよ」

「そんなご迷惑をかけるわけには……」

 話しながら歩く男は、どんどんと細い路地へと入っていく。


「あの、こちらですか……?」

 レオンは、馬車から見た、と言っていた。どう見てもこの道は、馬車が入れる広さではない。

「近道なんだ」

 路地の向こうに目を向けたローズは、隣にいる男と同じ年頃の男たちが数人、こちらを見ていることに気づいた。

 ざわり、とローズの胸が騒ぐ。