さすがに、結婚式は本人でないとまずいだろう。このままローズが結婚するわけにもいかないだろうし。

(どうしよう。いざとなったら、私も失踪するしか……でもそれではリンドグレーン伯爵様が困ることに……でも……)

 ローズが悶々としながら考えていると、向かいに座っていたレオンが言った。


「具合でも悪いのか?」

 我に返って、ローズは令嬢の笑みを顔に張り付けた。

「いえ。なぜです?」

「それならばいいが……では、プディングは嫌いか?」

 言われてローズは気づいた。考え事をしながらお茶をしていたので、さっきからスプーンを持ったまま、目の前のプディングには全く手をつけていなかった。見れば、レオンの方はもうとっくに食べ終わっている。