「レオン? 何か言ったか?」

 レオンは首を振った。その手は、硬く握りしめられている。

 気を取り直すように顔をあげると、レオンは父に言った。

「今日はこれから、秋まつりの寄附のために例の孤児院に行ってまいります」

「ああ、そういう時期だな。頼むぞ」

「はい」

 そう言って、二人は別の方向へ別れて行った。

  ☆

 結婚式は三日後に迫っていた。だが、伯爵家からはまだベアトリスが見つかったとの連絡はない。何度か問い合わせたあげく、伯爵夫妻は前日にこちらに来るという短い手紙が来ただけだ。