「うむ。せっかく相手をしていてくれたお前にはすまないが、予定通り、あの娘はハロルドの妻にする。ハロルドの結婚が済んだら、次はお前の妻を選ぶとしよう。実はもう目星をつけてあってな。ルモンの街に住む男爵家の娘で……」

「いえ、私は……!」

 勢いよく顔をあげたレオンに、公爵は目を瞬く。


「うん? 誰か心当たりの相手でもいるのか?」

「……いえ」

「そうか。まあ、まずはハロルドの式が終わってからだな。おとなしそうな娘でよかったよ。結婚してハロルドも落ち着いてくれるといいのだが……。まったく、結婚式はもう四日後だというのに、あれは本当に戻ってくるのか」

「もし……兄上が、戻ってこなかったら……」

 小さなつぶやきは、ぶつぶつと文句を言っているカーライル公爵には届かない。