身代わり令嬢に終わらない口づけを

「そういうわけでは」

「だが、先日も言った通り、あれはハロルドの妻になる娘だ。深入りするなよ」

 カーライル公爵はため息をつく。


「あれがいなくなったから急遽お前を当主にしてあの娘を妻に、と動いたのに、まさか今更ハロルドから結婚式には戻ると連絡がくるとはなあ。よりによって当主交代の報告にいった兄上……いや、国王からそんな話を聞くとは思わなかったぞ。国王に連絡を取る前に、まずはこちらに連絡するのが筋というものだろうに……相変わらず、アレの考えることはよくわからん」

「兄上は、一度口にしたことを反故になさるような方ではりません。戻るというなら、必ず式までには戻ってくるでしょう。ですから、結婚式の準備はそのまま進めております」